「教員不足」について
教育現場では日々多くの問題が起きていますが、「教員の数が足りていない」ということはご存じでしょうか。「教員の仕事はブラック」というイメージが広がっていることや、「教員になりたい人が減っている」「教員採用試験の倍率がどんどん下がっている」ことなどは何年も前からニュースになっていますが、効果的な対策は実施されず、今のところ状態は悪化し続けています。
NHKの調査によると、今年5月の時点で教員が2800人不足していました(小学校1487人、中学校778人、高校214人、特別支援学校321人)。去年から735人増加しています。
「不足している」というのは、本来いるべき教員がいないということです。なんとなく人手が足りないというのとは訳が違います。どれだけ大問題なのか、いくつか事例を紹介します。
愛知県の中学校では、美術担当の教員が「不足」し、1学期の美術の授業が行われませんでした。
広島県の中学校では、理科と国語の教員が「不足」し、4月分の授業が実施できませんでした。
熊本県の中学校では、社会科担当教員の産休を埋める教員が「不足」していたため、社会科の教員ではない教頭が2クラス同時に図書室で授業をしました。
東京都の小学校では、82歳の非常勤講師が「不足」した教員の穴を埋めるために、契約外の授業や給食の手伝いなどを行っていました。週7時間の担当授業以外は無給です。
千葉県の小学校は、教員が3人「不足」した状態で新学期がスタート。「担任が未定」という状態のクラスがあり、本来は担任を持たないはずの再任用の教員(退職後に再雇用されている教員)が担任の仕事を務めることに。6月になって、教員不足を補助する教員が担任として着任しますが、勤務できる講師が見つかったことで2学期から担任が交代。1年間で3人目の担任になりました。
こうした問題が、全国各地で発生しています。みなさんの身近な学校でも、程度の差こそあれ、「教員不足」による様々な問題が発生しています。自分の子供が、同じ学費を払っているにもかかわらず、受けられない授業があったり、教科の免許を持っていない教員に授業を受けることになったり、担任がコロコロ変わってクラスが落ち着かなかったり、先生達がバタバタしていてちゃんと指導してくれなかったりなんていう状況に置かれていたら、どう思いますか?
なぜ、こんなことになっているのか。問題を解決するためには、どうすればいいのか。そこが重要ですよね。何回かに分けて、そのあたりの話をしたいと思っていますが、まず言えるのは「国や自治体が教育にお金を出さない」ことが、根本の大問題だということです。
日本は、諸外国に比べて教育にお金を出さない国です。経済協力開発機構(OECD)が公表した2017年のデータでは、国内総生産に対する教育への支出の割合が、OECD諸国平均4.1%に対して日本は2.9%。比較可能な38か国中37位でした。
これは、国が「教育を軽視している」ということです。未来を担う子供達や、子育てに奮闘する親達を軽視しているということです。歴史的にも、教育に力を入れた国は発展し、教育を軽視したり悪用したりした国は衰退しています。今すぐ何とかしなければならない、重大な問題なのです。