「教員不足」について 2

 なぜ、教員が不足しているのか。NHKが教育関係者に教員不足の要因を尋ねたところ、以下のような結果でした。(複数回答)

「不足が出たときに臨時で教員になることを希望して名簿に登録する人が減少した」88%

特別支援学級が見込みより増えたこと」59%

「産休・育休を取る教員が見込みより増えたこと」53%

「病気で休職する教員が見込みより増えたこと」43%

 

 みなさんは、この回答を見てどう思いますか? それならしょうがないか、と思えますか? 私には、教育行政の完全な失策としか思えません。「見込みより増えた」というのは、見込みが甘かった、見込みが間違っていたということであり、見込みが外れた場合の対応策もなかったということです。

 産休や病休の人数が、突然2倍や3倍になったりはしません。実際、ここ数年の病休者は5000人前後で推移しており、大きな変化はありません。つまり、何人の欠員が出るか予想することは、難しくないのです。結局、対応策を真剣に考えていなかったとしか思えません。

 

 こうした状態の基になっているのが、最も回答の多かった「不足が出たときに臨時で教員になることを希望して名簿に登録する人が減少した」という考え方です。教員になろうと志した人は、都道府県ごとに実施される教員採用試験を受験します。ここで、不合格になった場合に欠員補充の非常勤講師として働く意志があるかどうか確認する書類の提出を求められます。これは、「教員として働きたいなら、欠員が出たら声かけてあげるから、名簿に登録しておきなさい」ということなのですが、この仕組みの裏には「登録している人は、教員になりたくて声がかかるのを無職の状態で待っている。声をかければすぐに仕事をしてくれる」という幻想があります。大学進学における浪人のように、「教職浪人」という言葉があることも、そうした考え方を表しています。

 かつては、そうだったのかもしれません。しかし、20年以上もダラダラと不況が続く日本で、いつになるか分からない採用を無職で待とうという人は少ないでしょう。しかも、教員になろうという人は年々減り続けているのです。そんな不人気な職業に対して、呼べばすぐに来ると思っているとすれば、致命的な時代錯誤です。

 こうして問題が大きくなってきて、多少は対策としての動きも出てきましたが、残念ながら大部分が的外れです。例えば、文科省は先日、教員採用試験の時期の前倒しや複数回実施などを検討すると発表しました。民間企業の内定が出る時期にぶつけることで、人材が企業に流れないようにするらしいのですが、どう思いますか? とりあえず、魅力において教員という仕事は企業に勝てないと、文科省は認めてしまったようですね。教職人気の低迷に、拍車がかかりそうな気がします。東京都では、転職情報サイトでの教員募集が始まりました。ハローワークで募集している自治体も増えているようですし、学校で配付される「学校だより」で教員を募集した事例もあります。山梨県では、県内で教員として勤務すれば、奨学金の返済を一部補助することにしたそうです。末期症状です。涙ぐましい努力ではありますが、良い方法とは思えません。熊本市では、非常勤講師の希望者にICT機器の研修を行うことで、希望者を増やそうとしているそうですが、それでは増えないでしょう。

 現場の人間は散々苦しんでいますから、ここまでの勘違いはしていません。問題は文部科学省都道府県議会、教育委員会など、行政側にあります。結局、人員が不足する一番の要因は、多くの人員を確保するための予算をケチっていることです。ですから、行政を動かす立場の私達国民一人一人が、情報を知って問題意識を持ち、「教育に金を出せ。出さない奴には投票しない」と声を上げていくことが重要です。